PFAコーティングとは

PFA(Perfluoroalkoxy)とは、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)にパーフルオロアルコキシ基を加えた高機能熱可塑性フッ素樹脂です。これをディスパージョン液(分散液)や粉体として塗装・焼付け加工することで、高耐食・高耐熱・高純度な表面皮膜を形成します。 - PTFEに比べて溶融粘度が低く溶融流動性が良いのでピンホールのない被膜を得ることが可能となります。被膜は、耐薬品性はもちろん耐熱性、非粘着性、滑り特性(低摩擦係数)、電気特性などの諸特性もポリフロンPTFE被膜同様に優れています。

➤PFAの耐薬品性について

PFA(パーフルオロアルコキシ)は、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)の優れた耐薬品性をそのまま受け継ぎながら、熱可塑性を兼ね備えた高機能フッ素樹脂です。PFAは、濃硫酸・フッ酸・王水・塩酸・苛性ソーダ・トルエン・アセトンといった強酸・強アルカリ・有機溶剤に対して、極めて高い耐性を示します。また、酸化剤(過酸化水素・次亜塩素酸ナトリウムなど)や塩素ガスといった反応性の高い薬品にも安定した耐食性を保持し、表面の劣化・変質・腐食がほとんど生じません。さらに、PFAは高温環境下でも耐性が維持されます。連続使用温度は260℃、短時間であれば300℃を超える温度にも耐えられるとされ、薬液が加温された状態でもコーティングの性能を損ないません。これにより、薬液加熱槽やエッチング装置といった高温高濃度薬液環境においても、非常に高い信頼性を発揮します。

 特筆すべき耐薬品性のポイント

  • フッ酸や濃硝酸などの超高リスク薬品にも耐性を持つため、半導体製造プロセス化学反応装置の内面コーティングなどで広く使用されます。

  • PFAは全フッ素化された分子構造により、化学的安定性が極めて高く、化学反応を起こさない特性を有します。

  • また、金属イオンや有機物などの溶出物が極めて少ないため、SEMI F-57などの純度基準を要求される用途にも適合します。

  • 米国Zeus社やKnight Materials社、Daikin工業の技術資料では、PFAが「最も広範囲な薬品に対し安定した耐性を示すフッ素樹脂」であり、「PFAは高温・高濃度薬液環境でも分解・浸透しにくい最適素材」と明言されています。

  • SEMI規格(SEMI F-57)適合の高純度PFAは、半導体薬液配管・装置部材のデファクトスタンダードとされています。

     他素材との比較(耐薬品性)

    材料 耐薬品性 高温耐薬品性 超高純度用途
    PTFE
    PFA ◎(最良)
    FEP ○〜◎

    PFAの非粘着性と撥水・撥油性について

    PFA(パーフルオロアルコキシ)は、非粘着性・撥水性・撥油性において非常に優れた性能を持つフッ素樹脂です。これは、全フッ素化された分子構造によって、**非常に低い表面エネルギー(おおよそ18mN/m前後)**を有することに起因しています。この数値は、ほぼすべての有機物質や水よりも低く、あらゆる液体や固体がPFAの表面に「くっつきにくい」ことを意味します。

    ➤非粘着性について

    PFAの表面は、油脂類・樹脂・粉体・薬品・水分などが付着しても、その接触面積が非常に小さく、滑り落ちるか、軽く拭き取るだけで除去可能です。このため、医薬品や食品製造装置においては、異物混入リスクの低減や洗浄性の向上に直結します。また、反応生成物や固形スラッジが析出しやすい化学装置内面にPFAをコーティングすることで、装置の連続稼働性やメンテナンス性の向上にも寄与します。

    たとえば、反応釜の撹拌翼や薬液タンクの内面、ウェーハ搬送トレーなどの部材にPFAコーティングを施すことで、材料の付着によるトラブルを未然に防ぐことができます。実際にPFAコート品では「ほぼ洗浄不要」「繰り返し使用においても性能低下が見られない」といった評価も多数報告されています。

    ➤ 撥水・撥油性について

    PFAの表面は、水や油を玉状に弾くほど高い接触角(通常100〜110°前後)を示します。水滴や油分が広がらず、丸い球体状になって転がり落ちる現象は、優れた撥水性・撥油性の証拠です。これにより、PFAは液体汚染の付着防止においても極めて効果的です。

    この性質は、製造ラインの防汚、流体搬送ラインの詰まり防止、食品加工機器の衛生性維持など、安全性・効率性・清掃性の向上につながります。特に製薬や半導体プロセスでは、残液が残ることで交差汚染や不純物混入のリスクがあるため、PFAの撥水・撥油性が評価されています。


    総合評価

    PFAは、非粘着性と撥水・撥油性の両面で非常に優れた性能を持ち、薬液・異物・水分・油脂など、あらゆる付着トラブルを防ぐ“表面機能材”として高く評価されています。装置の長寿命化、清掃工数削減、製品歩留まり向上といった効果が期待されるため、特に食品・医薬・半導体・化学装置などの厳しい環境で導入実績が増えています。

    ➤PFAの耐熱性について

    PFA(パーフルオロアルコキシ)は、PTFEに匹敵する優れた耐熱性能を持つ高機能フッ素樹脂です。PFAの融点は約303℃であり、連続使用温度はおおよそ260℃とされています。これは、ほとんどの汎用樹脂や高機能樹脂を上回る数値であり、極めて高温な環境でも安定した物性を維持することができます。

    この耐熱性は、PFAの全フッ素化された分子構造に起因します。炭素とフッ素の結合は非常に強力で熱分解しにくいため、他の樹脂に比べて熱による劣化や変色、軟化が起こりにくいのが特長です。また、ガラス転移点が非常に低く、常温では柔軟性を保ちつつも、高温では自己融着的に溶融成形が可能な点も、熱可塑性フッ素樹脂としての優位性につながっています。

    実際の応用例としては、加熱された薬液タンク、熱交換器、エッチング装置、ホットプレート上の搬送部品などがあり、これらの環境下で260℃前後の温度に連続的にさらされても、PFAは化学的・機械的性質を安定的に維持します。これは、他の高機能樹脂(PEEKやPAIなど)と比較しても極めて優れた耐熱安定性と言えます。

    さらに、短時間であれば300℃を超える環境下にも耐え得る実績があり、熱衝撃や高温化学腐食を伴う現場でも採用例があります。たとえば半導体製造装置の加熱ゾーンや、耐酸性を要求される高温ガス導入部材などにおいて、高耐熱性と耐薬品性の両立が必要な場合、PFAが選ばれる傾向が強いです。

    一方で、PFAにも限界はあります。たとえば、熱分解温度は概ね400℃前後とされており、それを超える条件では樹脂の分解やガス発生が生じる可能性があります。さらに、繰り返しの加熱冷却による物性変化(疲労や表面性の低下)については、使用条件や加工精度に依存するため、すべてのケースにおいて一律に保証できるかは「わからない」と言わざるを得ません。

    総じて、PFAは「耐熱性・耐薬品性・成形性」の三拍子が揃った非常に優秀なフッ素樹脂であり、高温化学環境でも長期間にわたり信頼性を発揮する材料として、半導体・化学・医薬・エネルギー分野で重宝されています。

     PFAまとめ

    PFAは「あらゆる薬品環境において、最も信頼性が高いコーティング材料」のひとつであり、高濃度フッ酸や有機溶剤、極端なpH条件下でも腐食や変質がほとんど発生しないため、高耐薬品性+高純度要求を両立したい設備には最適です。

PFAをはじめとする各種フッ素樹脂製品をお探しの方、またはPFAコーティングをご検討中の方は、ぜひ株式会社COMPASUまでご相談ください。お客様のご要望に応じた製品のお見積りや、最適なコーティング仕様のご提案をさせていただきます。